桐生紀行

今回の一泊家族旅行は桐生方面。渡良瀬渓谷鉄道・富弘美術館といえばそれぞれの専門の世界ではそこそこ知られているが、やはり一般的にはマイナーエリアだろう。
たださえ曖昧な北関東にあり、しかも高崎や宇都宮のようにそこを拠点に行ける目玉スポットがあるわけでもない桐生はなおさらである。
しかしながら、ここには他の地方にはない濃密な空気が流れている・・・。それが何であるのかは帰宅した今でもよくわからない。ただいえるのは単にスポットを車で回りながら「消費する」だけならそれだけの所でしかないが、元鉱山用鉄道にのり、村営バスを乗り継ぎ、数キロ分は歩きながらこの地域に浸った我々にとっては違ったということだ・・・。

全体感としてまとめるのは難しいので個別に振り返ってみる。

負の遺産 足尾銅山
都築響一「珍日本紀行」(ちくま文庫)にも紹介されているこの場所に私が初めていったのはおよそ10年前。渡良瀬渓谷鉄道にぶらりとのって偶然立ち寄ったときで、その後こりきと二人で計2度訪れている。今回は甲子園風にいえば、8年ぶり3回目ということになる。
ここでは江戸時代に銅鉱脈が発見されて以来の採掘の歴史が紹介されている。田中正造といえばピンと来る人もいるだろうがここは足尾鉱山鉱毒事件で有名で、つまり近代日本の栄光と汚辱の歴史がこめられた場所でもある。しかも周辺は産業廃棄というべき奇観、地肌もあらわな山々、空き家の目立つ街並み・・・さらにはアクセスの悪さがその淋しさを増徴させている。
しかしながら、待合所からトロッコに乗った後、半ば唐突に坑道跡入り口でおろされた後の徒歩で見学する坑道内の蝋人形や資料館の展示はなかなかの充実ぶりをみせる。ここでは簡単に引き返せない(精神的にも物理的にも)状況であるため、じっくり学習できることは間違いない。

最近は世界遺産登録を目指しているらしいが、へたな「化粧」はやめて負の遺産としてのスタンスを明確なものにすべきであろう。

〜駅の温泉〜
日本でも有数の「駅内温泉」のある水沼駅。現在のスパ施設の原型のような施設がホームと直結している。ここの施設のおばさんが言うには、ここに温泉が出来たことで渡良瀬渓谷鉄道は黒字になったそうな・・・。温泉そのもは山の温泉の感じがして好きなほう。

〜場所と建築〜
富弘美術館は前から行きたかった場所だ。ここは多数の円形の部屋が隣接していながら全体は長方形というその構造が変わっている。円というのは非常に中心性をもつ形だが、長方形の平面で収められていることで逆に曖昧で独特な空間に感じて面白かった。
建築は満足・・・だが何か違和感が・・・。
それは簡単に言えば「(建築の場所が)ここじゃない(気がする)」、逆に言えば「ここにはもっと違う建築じゃないか」という感覚。勿論、展示作家の地元だったり隣接する草木湖への眺望も良いし美術館としてはかなり充実してるのだが。なんだろうな。
美術館にはおばさんや小学生の団体も押し寄せる。さすが日曜。

〜宿の楽しみ〜
宿は旅の大きな楽しみの要素だ、特に地方のビジネスホテルは。
今回泊まったのは桐生駅前の「エースホテル」。以前から何となくマークしていた改装直後のホテルだ。
こりきがやろうというので「酸素チャージ機」を借りる。一時間500円だったが結局、翌朝まで貸してくれた。効果があったかどうかはわからず。

〜山の遊園地〜
桐生市営の遊園地。例のごとく貸切状態だが規模も料金もコンパクトでかなり楽しめる。なにより地図上では駅から近いと思いきや、歩くこと1時間しかも坂道。その到着までのプロセスの苦労があったからこそ楽しみもひとしおであったことはいうまでもない。併設された動物園もなかなかの充実ぶり。

〜すいてるのに・・・〜
最後に東武鉄道。その料金の安さは魅力だが、特急が全席指定なので空いている他の席に座ると注意を受ける。まあ、しょうがないんだけどそのへんはおおらかさが欲しいところ。