彼は、自分が生きることによってわれとわが道をさえぎるような感じがしている。そうおもうと逆に、妨害されていることは、自分が生きている証拠だという気がしてくる。
                                          カフカ「彼」より

カフカは私が最も好きな作家だ。感覚、という以外に理由らしい理由はわからないが、強いて言うならば以下のようなことだ。
人にはいろんな感情がたえず変化している。それを数値化するならば+126、−120・・・と常に揺れ動いているようなものだとすると、カフカの世界は0、に思える(ただしこの0とは希望も絶望もない無のようなものだ)。とは言ってももちろん自分が0になることはなく、ほんの少しだけそこに近づく気がするだけではあるが。言い方によってはおちつく、のだがカフカでおちつくってのもどうなんだか・・・。
といったわけで常に手元においているカフカ全集2(新潮社)はすでにぼろぼろだ。