心地よい惑い

路面電車 クロード・シモン 白水社 2001
病床で高熱にあえぐ老シモンと電車の運転台で得意げにする少年シモンの姿がその回想を通じて重なり合う・・・。
通常コミュニケーションとはいかにわかりやすく簡潔にするかだ(主に実用的な面では)。だがこの小説では、でてくるイメージごとに言葉が綴られていてそのリズムに慣れるのには時間がかかるし、また話も断片的でしばし立ち位置を見失う。だが逆にその連続したイメージ、リズムがその世界にみずみずしさを与えていて、読み終えた後不思議な余韻が残る作品だ。