『ライク・サムワン・イン・ラブ』新宿武蔵野館ほか

アッバス・キアロスタミの新作(今回は日本ロケ)を新宿で見てきた。キアロスタミは好きな映画監督の一人なので、その魅力を少しでも伝えたい、と改めて思い・・・。


キアロスタミはイランの1940年生まれの映画監督。「あまり知らない」からと、この人の作品をスルーしてしまうとすれば人生の損失であろう。




話は元大学教授のタカシ(奥野匡 84歳!)が自宅にコールガールの明子(高梨臨)を呼ぶところから始まる。翌朝、明子を車で大学に送ったタカシは、明子の婚約者・ノリアキ(加瀬亮)と出会うが、ノリアキはタカシを彼女の祖父だと勘違いしてしまい、物語は予期せぬ方向へと進んでいく、というもの。



この間24時間にも満たない話の中で、我々はその切り取られた「日常」を、「世界」を感じる。そこには喜怒哀楽も嘘もホントも確信も不安も入り混じった瞬間の連続だ。それは同時に日常の豊かさに気づかせてくれる。「これからどうなるのか」といこと以上に「今何が起こっているのか」を感じさせ続けてくれる映画というのはそうそうない。勿論そのためのテクニックはある。役者に知る台本はそのシーンのみだったり、セリフごとに切れるカットではなく5〜6分の長回しなどなど。ただそれをしっかり表現できるのがキアロスタミだ。
       


しかも今回は日本でのロケ、ということでよりリアルだ。いや「日本だからリアル」なのではなく、「日本でなくても一緒だろう」と感じるからリアルなのである。

公式サイトhttp://www.likesomeoneinlove.jp/




ちなみにキアロスタミ作品で最も好きなのは「桜桃の味」(1997)。イランである自殺願望の中年男が、その自殺の手伝いをいろんな人に頼んでいくという話。この大学4年の時にみた作品は自分のベスト5に入る作品(約900本中)。いまDVDで検索したらなんと¥24000!!でもそれくらいの価値はある作品。ほかにも小学校で間違えて友達のノートを持って帰ってしまい、帰宅後それを返そうと必死で友達の家(イランの田舎なので山一つ超える勢いの遠さ)を探す少年を描いた「友だちのうちはどこ?」などもお薦め。
[桜桃の味]
内容・・・以下の会話は主人公の運転する車の中
・自殺を依頼する主人公「あの穴に私を埋めてくれれば、車にある大金はそのまま受け取ってくれ。理解できるね?」
・最初に依頼された若者は怖がってにげてしまう
・別の男に再度以来
・男は主人公に言う「自殺は他人を殺すのと同じように罪深いものなんじゃないか」・・・結局男も去る
・別の老人に以来
・老人「もし人々が世の中の些細なことで人生から立ち去る選択をするのであれば、この大地からは誰もいなくなってしまうことだろう」・・・・
・そして最後に主人公がとった行動とは・・・・。
[予告編]