ビジネス書として読むべし

学問のすすめ 福沢諭吉 岩波書店

単なる勤勉奨励ものと侮ってはならない。有名な「天は人の上に人を造らず・・・」で始まる本書では、むしろ個人は生まれながらに能力の差があるのは当然でその上で学問とは何か、なぜ必要か、いかに行うべきか、そしてその機会は貴賎の差無く平等である、ということがわかりやすく述べられているといえる。
現代と時代背景が異なるとはいえ、基本的な考えは今でも新鮮さを失わないどころか、今こそ有用であろう。ただ、思想書というより実用書として読むのが適している感じだ(それは福沢本人も『これは法・経済の公論であって仁徳の私徳を忘れるな』といっている)。
いろいろと面白い箇所があるのだが、例えば14編の「心事の棚卸」。「『10年以内にこれをする』という人のは多いが『10年前に企てたことを今既に成した』という人は今だ見たことがない・・・事を企てるに当たっては時日の長短を勘定に入れてないがための不都合だ・・・」、つまり知徳事業の棚卸の大事さを説いていたり・・・。
その終始歯切れ良い文章は新聞のコラムののような感じで読みすすめるとちょうどいいかも。