少年文庫おすすめ

「エーミールと探偵たち」 エーリッヒ・ケストナー 1929年独
盗まれたお金を取り戻すべく、ベルリンを舞台に少年たちが知恵を絞って協力し、犯人を追うというお話。


「こどものための」イメージのケストナーだが、もともと演劇批評が専門で当時の出版社社長に「こどものための本を書いてくれ」と頼まれたのがきっかけでこの作品を書いたらしい。
先ほどのイケてない温泉の露天風呂で一気に読んでいたのだが、印象深いのは「新しさ」の印象だ。現代は新しいものが新しいと感じられなくなってしまった時代、いやそういった感覚こそも失われているに等しいが、この「エーミール〜」では少なくともふたつの新しさを体験する。ひとつは第二次大戦前のベルリンの風景での「新しさ」。そこに登場する人混み、路面電車、高層ビル・・・エーミール少年からみた「まだ『新しさ』が『新しい』」感覚(つまり今のように「新しい」ことに慣れていない)は、時代のそれと同じだったのだろう。もうひとつは大人の描写に代表されるような子供の世界への「新しさ」。

それにしてもこの少年文庫シリーズ、自分の子供に読ませたいと思う前に、まず自分が読むべき本は多いですな。