アラブ・エクスプレス展 森美術館

巷では守備職人藤田のトレードで騒然となっている(DeNA横浜ファンのみ)中、六本木に行ってきた。

「アラブ」というとどんなイメージだろうか?ピラミッドをバックにラクダにまだがるおっさん、紛争、イスラム教、砂漠・・・。そんなステレオタイプから一歩中に入ってみたい人にはお勧めの展覧会。「エクスプレス」という題名にもあるように、急速に変化するアラブの変化を感じる作品が多く、それは歴史だけでなく今何がおきていてこれからどうなるのだ、という感覚を得るには充実した内容。これが1500円程度でみれるなら安いと思う(個人的には展望台みないのでその分やすくしてほしいけど・・・)。



いくつか印象に残った作品(なんと撮影自由!)

*これは1950年〜2000年のエジプト映画からピラミッドがでてくるシーンをランダムにつなげた映像。そこでのピラミッドは古代が静止したようなイメージではなく、運転中からみえる、会話の背景など生活の一部の風景だ。そこでは観光客も一つの風景であり、パリのエッフェル塔のような存在に近いともいえる。



*銃を前方に置きながらの様子は、一見「テロリストが声明をだしてる」ようだが、これはある俳優が演じているもの。しかも読んでいるのは「千夜一夜物語」。アラブを代表する文学作品だ。このシンプルな表現を見続けていると、偏見の違和感が徐々に溶解していくようでもある。



*なんであやまっているのか。これ、イラク人の作家自身がアメリカで実際にいろいろな人に「I'm sorry」と声を掛けられたかららしい。なぜかと言えば当時はイラクアメリカが軍事介入していた時期だったからだ。ただ、それがイラクの国民に対してなのか?戦争そのものに対してなのか?具体的に何に対する言葉なのかはいまいち曖昧。そんな感覚を3色のネオン(アメリカの星条旗をあらわす)で作家はユーモアをもって表現していて思わずニヤっとしてしまう。そう、ユーモアであるがゆえにその作家の感覚が重いテーマでも素直に入ってくるのだ。



他にも紹介したい作品が多いがこれで。




あと、実際に自分が10年前にアラブを旅したときの感覚を少し。



アラブ(エジプトでもヨルダンでもパレスチナでも・・・)はまず街の「音」が違う。起きた時に流れるコーランは大音量だが不思議と心地よい。本来イスラム教とは穏やかな教義だというのもあるだろう。だから日本でいう近所のお寺の鐘の音のようなものに感じたのかもしれない。他には余計な「都市の音」がないから。もちろん実際には車のクラクション、人の話し声は相当なものだ。ただそれが「人が発している」音なのか「(勝手に)人工的に発せられている音」なのかで感じ方は違うのかもしれない。